2019年2月18日月曜日

外国税額控除はなかなか複雑。。

複利のチカラで億り人さんのブログ記事:「配当金生活に米国株は向いてない?配当の二重課税問題は意外に深刻だった」を読んだ。
なるほど、そういうこともあるのね、と思い、自分の確定申告の書類を見てみると、外国税額控除というのは色々複雑な制度だなということがわかったので、その紹介をする。

ちなみに私の場合、外国税額控除の申請は2年前の2016年(H28)分の確定申告から。
それ以前は、調査不足もあるが国税庁の確定申告書等作成コーナー(以下、「作成コーナー」)の入力ページでどこにどう入力すればいいのかよくわからず、そもそも控除を放棄していた。
最近は楽天証券の書類でも特定口座年間取引報告書に外国所得税額を記載してくれているし(H26以前は別書類だった)わかりやすくなった。

1. 過去3年の外国税額控除の確認

1.1 2016年(H28)分の確定申告

結論:外国所得税額が控除限度額の範囲内に収まっており、問題なし。

作成コーナーで外国税額控除の金額を入力すると、確定申告書類の1つとして「外国税額控除に関する明細書」という書類が作成される。
この明細書に具体的な計算がなされているので、これを追ってみる。
以下で出てくる文言・記号はこの明細書に合わせている。

外国税額と控除限度額の計算(明細書中3の表)
項目 金額
外国所得税額(C) 61,594
所得税額① 1,541,100
総所得額② 13,044,065
国外所得総額③ 621,477
控除限度額④=①×③/② 73,424

この年はまだ働いていて給与所得があったのと、株式の売却益もいくらかあったので、それらの合計である総所得額②が大きかった。
このため、外国所得税額(C)が控除限度額④の金額よりも少なく、外国所得税額の分がそのまま外国税額控除㊸として61,594円分控除された。

1.2 2017年(H29)分の確定申告

結論:外国所得税額が控除限度額を超過しており、所得税額分控除されず

この年の分の「外国税額控除に関する明細書」の計算を見てみる。

外国税額と控除限度額の計算(明細書中3、4の表)
項目 金額
外国所得税額(C) 55,991
所得税額① 430,600
総所得額② 6,508,700
国外所得総額③ 570,266
控除限度額④=①×③/② 37,727
復興所得税⑤=①×2.1% 9,042
控除限度額⑧=⑤×③/② 792

控除限度額と超過額の計算(明細書中5の表)
項目 金額
所得税(二)=④ 37,727
復興特別所得税(ホ)=⑧ 792
道府県民税(ヘ)=(二)x12% 4,527
市町村民税(ト)=(二)x18% 6,790
控除限度額合計(チ)=(二)+(ホ)+(ヘ)+(ト) 49,836
外国所得税額(リ)=(C) 55,991
控除限度超過額(カ)=(リ)-(チ) 6,155

この年は仕事を辞めた年で、給与収入は前年の約半分、また株式の売却益も少なかったので総所得額②は前年の約半分となり、所得税額①も低かった。
そのため外国所得税額(C)は控除限度額④を越えた。
ただし、控除限度額はこれだけではなく、明細書の5の表で計算されるように、
復興特別所得税と市民税分の控除限度額もあり3割強増える。

これでも控除限度額を6,155円超えている。

しかし、優遇措置があり、前3年以内に外国税額控除を申告しており、そこに控除余裕額があれば、その分も差し引いてくれる。
計算がややこしくなりすぎるのでここには載せないが、所得税法第95条第2項、第3項による控除税額だそうだ。

結果として、控除限度額37,792円に復興特別所得税の控除限度額792円と、前記所得税法第95条第2項による控除額6,155円を加えて、外国税額控除㊸の額は44,674円となった。

1.3 2018年(H30)分の確定申告

結論:外国所得税額が所得税の控除限度額を超過しており、所得税額分控除されず

この年の分の「外国税額控除に関する明細書」の計算を見てみる。

外国税額と控除限度額の計算(明細書中3、4の表)
項目金額
外国所得税額(C)71,204
所得税額①842,590
総所得額②9,689,095
国外所得総額③739,132
控除限度額④=①×③/②64,276
復興所得税⑤=①×2.1%17,694
控除限度額⑧=⑤×③/②1,349

控除限度額と超過額の計算(明細書中5の表)
項目金額
所得税(二)=④64,276
復興特別所得税(ホ)=⑧1,349
道府県民税(ヘ)=(二)x12%7,713
市町村民税(ト)=(二)x18%11,569
控除限度額合計(チ)=(二)+(ホ)+(ヘ)+(ト)84,907
外国所得税額(リ)=(C)71,204

この年は仕事を全くしていない年で、総合課税の所得は配当所得のみだが、ここで計算する総所得額②には株式の売却益による所得(要は申告分離課税分の所得)も含む。結果として売却したものが多かったので、総所得額②もそれなりに多くなった。
そのため外国所得税額(C)は控除限度額④を越えたが、前年の所でみたように、復興特別所得税と市民税分の控除限度額もあり3割強増える。
結果として外国所得税額(C)は控除限度額合計(チ)よりは越えてない。

しかし、外国税額控除㊸として控除してくれるのは所得税(二)と復興特別所得税(ホ)の分を合計した65,625円である。

1.4 まとめ

以上、3年分を見てきた通り、現在の外国税額と所得の水準というのはだいたい外国税額控除が80~90%くらいは戻ってくる水準であることがわかった。
また非常に複雑で、単純な計算ではないこともわかった。

ただこれは確定申告書の作成コーナーを使用して、特定口座の明細、外国税額の金額などを入力すれば計算自体は自動でやってくれるので、計算自体を覚える必要はない。

2. これからどうするか

外国税額控除による戻しをある程度得ようと思えば、あまりこれ以上外国株・海外ETFの比率を増やすのは得策ではなさそうである。
日本株の比率を増やして配当所得を増やすこと、総合課税にすることで配当にかかる税率を下げることを重視した方がよさそうだ。
他にも、

  • 配当を出さない投資信託の配分を増やす(所得を抑える)
  • 二重課税のないADRの銘柄を持つ
  • 二重課税を考慮しても株価が上昇しそうな外国株を持つ

とか、いろいろ考え得るが、結局それらのキャピタルゲインとインカムゲインがどうなるか、外国株の場合はさらに為替水準の変動によっても利益は変わってしまうので、厳密には計算できない。
それぞれをそれなりの比率で持っておくのが良いかと思う。




0 件のコメント:

コメントを投稿